今年、2011年は「国際森林年」って、ご存じでしたか?
国際森林年(the International Year of Forests)は、世界中の森林の持続可能な経営・保全の重要性に対する認識を高めることを目的に、国連が定めたものです。
もともとは、1992年の地球サミット・リオ会議で、「森林の保全と持続可能な経営」の重要性が指摘され、2006年12月の国連総会において、「2011年を国際森林年にする」ことが正式に決定されました。「森林に対する世界の市民の理解と参加」を目的として、国連事務局直属の国連森林フォーラム(UNFF、ニューヨーク)事務局が中心になって、活動を展開していきます。たとえば、世界的行事として、植樹、森林祭、会議、写真等の展示、森林におけるスポーツ行事や出版物等の活動が計画されています。
国内的には、林業が業としてなかなか成り立たなくなり、森林の蓄積量は増えている一方で、手入れができなくなった森が荒れ、国土の荒廃につながるという心配が現実となりつつあります。
他方、世界的には、森林の消失が大きな問題です。1990~2010年までに世界で失われた森林の面積はどのくらいだと思いますか? なんと、日本の国土の4倍もの面積の森林が、この20年間に世界から姿を消しているのだそうです。
先進国の森林面積は同じか若干増えている一方、森林減少の大部分は途上国で起こっています。森林が減少するということは、それまで森林や土壌に蓄積されていた二酸化炭素が大気中に排出されるということでもあります。途上国の森林減少から排出する二酸化炭素の量は、世界の温室効果ガス排出量の約2割を占めるほどの膨大な量になっています。
京都議定書では、この森林減少に伴う排出は対象外ですが、現在、今後の枠組みには「森林の減少・劣化に由来する排出の削減(REDD+)」を組み込もうと交渉が進められています。
このように、森林は「二酸化炭素を吸収して温暖化を防ぐから」「人間に必要な木材や紙の原料を提供してくれるから」大切だ、だから、どうやって守るべきかと、国際交渉で議論されており、いろいろなしくみが作られ、推進されています。国際森林年のテーマは、Forests for People 「(人々のための森林)」。
でもねぇ。 人間がこの世界に登場するずっと前から、木は生えていたし、森は地球のいたるところにあったのです。森林も木も、別に「人間のために」あるわけではない。1本1本の木が、わたしたちと同じように、1つの「いのち」として生きているのです。
屋久島に生えている屋久杉の中でも最長老の「縄文杉」は、何と7200歳だと聞いたことがあります。人間がまだ田んぼや畑や家を作るまえのこと、狩りをしたり、木の実を集めて食べていた頃から、地球にどっしりと根を下ろして生きているんですよね。スゴイと思いませんか?樹齢7200年ともいわれる縄文杉
屋久島の杉は、1000歳以上になると「屋久杉」と呼んでもらえますが、1000歳未満は「小杉」と呼ばれるんですって。せいぜい数十歳の私たちなんて、屋久杉たちからみたら、赤ちゃんみたいなもの。数千年のスパンで、地球と人間の歴史をずっと見ながら、何を思っているのでしょうね。
とくにこの100年間に地球の姿は大きく変わりました。人口増加や経済発展のために、多くの森林が切り開かれ、道路や工場に変えられ、地上の多くの緑が茶色に変わりました。二酸化炭素や有害物質がモクモクと撒き散らかれ、地上に住んでいる多くの動物や植物が絶滅して消えている様子を、縄文杉はどう思って見ているでしょうね。
今年もきっとそれぞれにとって忙しい・慌ただしい一年でしょうけど、ときどきは「心を亡くさず」「心を荒らさず」にいるためにも、森に会いに行きませんか?
森は木だけではなく、たくさんの植物や動物、虫たち、バクテリアたちが「いのちの網の目」を広げている場所です。いろいろな仲間に会いに、行ってみませんか?
枝廣 淳子(えだひろじゅんこ)
私の森.jp ファウンディング・アドバイザー
環境ジャーナリスト、翻訳家
東京都市大学環境学部教授
東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。心理学を活かし、「自分や人を変える」技術を構築。講演、執筆、テレビ出演などのほか、NGOジャパン・フォー・サステナビリティの設立者・代表や東京大学客員研究員(人工物工学研究センター)としての活動等を通じ、人や組織の「変化のプロセス」の研究・サポートを深める。首相直轄の温暖化問題に関する懇談会メンバー。開発、研修、ファシリテーションを担当するほか、講演、執筆の実績多数。近著に『入門!システム思考』、翻訳書にアル・ゴア『不都合な真実』など。